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 日本農業気象学会の理念

 

日本農業気象学会

 
 日本農業気象学会は、農業と気象との関係を総合的に研究し、食糧生産の向上と安定化への寄与を目標とする学会として、昭和17年(1942)に誕生した。初期の頃は、農作物と気象環境との定性的な関係解明が主に行われた。次に定量的な耕地微気象に関する研究が精力的に行われ、空気力学的および熱収支的な物質・エネルギーの輸送・伝達機構の解明などに基づいた多くの理論が体系化された。これらの知見は、耕地の微気象改良や施設園芸の環境調節へと応用され、有力な農業気象技術へと発展していった。
 その後、作物の気象反応・収量予測・適地判定・気象災害・気象改善、施設内の環境調節、農業気候、生物季節、微気象、局地気象、生物生産システム(植物工場、植物組織培養)、農業情報システムなどに研究の対象範囲を拡大し、それぞれの理論の体系化と問題解決に努めている状況である。これらの成果は、機関誌「農業気象」で発表されるとともに、「農業気象の実用技術」、「Agricultural Meteorology of Japan」、「新編農業気象ハンドブック」、「農業気象学用語集」、「新しい農業気象・環境の科学」、「新編農業気象学用語解説集」等、多くの図書としても発行されている。
 また最近では、「地球温暖化」、「砂漠化」、「酸性雨」、「オゾン層破壊」等の地球規模の環境問題が顕在化し、農業気象学分野からの積極的な貢献が求められている。この重要で困難な役割を的確に果たすためには、本学会員が半世紀以上にわたって培ってきた多くの知見と経験を活かし、さらに関連分野や関係機関との協力のもとに、邁進していくことが肝要である。
 さらには、農業気象学の知識の普及や教育を図ることが不可欠である。異常気象の発生時にとどまらず、常時においても教育機関や農村において農業気象技術への関心を高め、民主的な学会として門戸を開き、学会活動の裾野を広げることが必要である。このためには、より多くの実用的な技術情報を本学会から広く一般社会に発信していくことが重要である。
 以上のように、日本農業気象学会は、農業、林業等に関わる生物と気象環境の相互作用に関する総合的な研究を通じて、食料生産の安定化と食料の品質向上、地球環境から地域環境までの広範囲な気象環境の改善と保全等に貢献することを理念とする。
 
◆目標
 上記の理念を達成するために、日本農業気象学会は、これまで培ってきた知見と経験を活かすとともに、関連諸科学の仮説や方法論等を駆使し、国際的・学際的視野に立って、農業気象環境の保全、安定的な食料生産と品質の向上に関する問題を解決し、農業気象学の進歩および農業気象学の知識の向上と普及・教育を図ることを目標とする。
 このため、論文誌「農業気象」と情報誌「生物と気象」、および各種図書の刊行、ならびに全国大会・支部会や国内・国際の研究会・講演会・シンポジウム・ワークショップなどの開催を行う。そして、これらの活動から得られた成果をわかりやすい情報として広く世の中に発信し、農業気象技術への関心を高め、学会活動の裾野を広げるとともに、国内の農業気象研究者および関係諸科学の研究・教育・行政関係者のみならず、またアジアはもとより、広く世界の農業気象研究者等と連携・協力を図りつつ、農業気象学の知識の向上と普及・教育を図る。
 
◆研究対象領域
 日本農業気象学会は、これまで主として以下の研究領域を対象としている。すなわち、農業と気象・気候との相互関係の解明を基本とする一方、農業に限らず、より広い生物と気象・気候との相互関係の解明をも対象とする特徴がある。
 (1)  作物・植物等の気象反応
  作物気象生理・生態反応、作物生育予測、収量(生産力)予測、適地判定、生物季節、気候変化と気象反応など
 (2)  気象災害、気象改善
  気象変動・異常気象評価対策、農業気象災害の発生予測・軽減法、気象改良・微気象改善技術、気象環境保全など
 (3)  微気象、局地気象
  耕草林地の微気象・局地気象、エネルギー移動、熱・運動エネルギー収支、水・物質(炭素等)収支など
 (4)  施設内の環境調節
  農園芸施設内の環境調節、簡易被覆による環境調節、閉鎖系人工気象環境下の生物生産など
 (5)  農業気候、気候資源
  農業気候区分、大小農業気候資源、農業気候的生産立地計画など
 (6)  農業情報システム
  メッシュ気候情報、リアルタイムメッシュ気象情報、リモートセンシング情報、 農業気象警報システムなど
  
◆展望
 21世紀は環境(大気・水・土)の世紀といわれる。現在、地球環境は変動しており、農業や生物をとりまく気象環境は悪化の一途を辿っている。例えば、地球温暖化が進行する中で、近年、異常気象が頻繁に発生している。これは、まさに、農業のよってたつ「適地・適作」の概念を根本から覆す重大な問題である。また、人為起源の浮遊物質による大気汚染、河川・湖沼などでの水質汚染、農地の土壌汚染などが進行し、食料生産から人間生活までもが脅かされている状況にある。
 以上のような状況下で、日本農業気象学会として、新たに取組むべき研究課題には、例えば以下のようなものが考えられる。
  地球環境変化(地球温暖化等)の農業生産への影響評価
  変動気象に対応可能な生育予測・診断法の開発
  環境ストレス耐性作物の生産技術の開発と応用
  砂漠化・黄砂の発生機構の解明と緑化等の砂漠化防止対策
  気候変動の評価と農業面での異常気象対応技術の開発
  地球温暖化防止のための農業気象的炭酸ガス削減法の開発
  太陽・風力・水力等自然エネルギーの利用効率向上技術の開発
  大気汚染物質による農作物の被害評価とその防止対策
地域気候資源特性・メッシュ気候情報のデータベース化
  植生の環境形成機能・構造の評価解明とその利活用
  作目・品種別の適地・適作判定予測モデルの開発
  病害虫の発生動態解明と気象的予測モデルの開発
 以上の課題例は、いずれも日本農業気象学会が得意とする分野である環境問題関連の解決法を駆使すれば、これまで培ってきた豊富な知識・経験の延長線上で相当程度解決できるものと確信している。そして、日本農業気象学会は、上述の研究活動あるいは教育活動を通じて、一般社会からの環境関連の各種要望に答えるべく努力を怠らなければ、社会貢献を図ることが可能と考えられ、展望は比較的明るいものと判断される。                
 

(2005年1月)